なぜ「日本人90万人減」が“お金のニュース”なのか
もしあなたが、ニュースで流れる「日本人の人口が90万人以上減った」という数字を、どこか遠い世界の話だと感じているなら、ちょっと立ち止まって、この話を聞いてください。
これは、たった1日で日本から人口約90万人分の町が消えた、というのと同じレベルの話。しかも、これはもう16年も続いている、“止まらないトレンド”なんです。
私は、長年調理師として現場に立ち、その後は福祉や金融の世界でライターとして活動してきました。その中で、多くの人が「なんとなく」で決めているお金の判断が、どれほど大きな差を生むかを見てきました。そして、この「人口減少」というニュースは、まさにその判断の前提を根底からひっくり返すほどのインパクトを持っています。
この数字は、あなたの給料、税金、年金、そして住んでいる家の価値にまで、確実に影響を及ぼし始めます。
では、この「日本人90万人減」という現実を、私たちはどう読み解き、どう行動すればいいのでしょうか。
今日は、このニュースを**「お金のニュース」として読み解き、人口減少時代を“チャンス”に変えるための具体的な行動プラン**を、私の経験談も交えながら、一つずつ丁寧に解説していきます。
この記事を読み終える頃には、「漠然とした将来への不安」が「今日からやるべき具体的なアクション」に変わっているはずです。
日本人90万人減の衝撃：まずは数字から事実を整理しよう
まず、このニュースの肝となる数字を整理しましょう。
2025年1月1日現在の住民基本台帳によると、
- 日本人住民の人口：1億2,065万3,227人（前年比90万8,574人減）
- 外国人住民の人口：367万7,463人（前年比35万4,089人増）
- 総人口（日本人＋外国人）：1億2,433万690人（前年比55万4,485人減）
最も衝撃的なのは、日本人の減少数が16年連続でマイナスとなり、その減少幅が統計開始以来最大となったことです。一方で、外国人住民は過去最高の増加を記録しました。
人口減少の主な要因は、出生数よりも死亡数が多い**「自然減」**です。2024年は出生数が過去最少の約68.8万人、死亡数が過去最多の約160万人となり、差し引き91万人以上の自然減となりました。
そして、この人口動態は、地域によって大きな差が出ています。東京、そして千葉がわずかに人口を増やした一方、他の46道府県はすべて人口が減少しています。これは、人々が仕事や生活の機会を求めて、都市部に集中する傾向が加速していることを示しています。
お金の前提が変わる！マクロな視点で何が起きるか？
この人口動向は、私たちの生活の土台である「お金」の仕組みに、すでに大きな影響を与えています。
1. 賃金と物価が上がる？！
働き手が減ると、労働市場は深刻な人手不足に陥ります。特に医療・介護・建設・物流といった現場を支える職種では、人手確保のために賃金が上がっていく可能性が高いでしょう。この人件費の上昇は、最終的に商品やサービスの価格に転嫁され、物価全体を押し上げます。
2. 税金と年金の負担が重くなる？
高齢者が増え、働き手が減るという構造は、社会保障制度を直撃します。医療や介護にかかる費用は増加の一途をたどり、その財源を賄うために、私たちの支払う税金や社会保険料の負担は、構造的に重くなっていくと考えるべきです。
3. 外国人増加が新たな需要を生む！
外国人住民が過去最多となったことは、新たなビジネスチャンスと生活の変化をもたらします。例えば、多言語対応のサービス、外国人向けの住居や教育、日本語学習の需要など、これまでになかった市場が生まれています。
これらの変化は、私たちが当たり前だと思っていた「お金の常識」を、根本から見直すことを迫っています。
家計戦略：可処分所得を守る4つの柱
「給料が上がっても、物価と税金が上がって手取りは増えない…」
多くの人が抱えるこの不安を解消するために、私が実践してきた**「可処分所得（手取り）を守り、増やすための4つの柱」**をご紹介します。
柱① 収入：人手不足時代に“強い”領域で稼ぐ
人口が減り、人手不足が深刻化する時代には、**「替えの利かない人材」**になることが何より重要です。
- 現場×資格/責任：電気・設備保全、看護・介護、物流現場リーダーなど、専門的な資格や責任を伴う現場の仕事は、AIやロボットに代替されにくく、賃金交渉力が生まれやすいです。
- 現場×デジタル：現場の知識に加えて、ExcelやPower BIを使ったデータ分析、生成AIによる業務自動化などのスキルを組み合わせることで、市場価値は一気に跳ね上がります。
- 対人スキル：店長やチームマネジメント、採用・育成といった、複雑な人間関係を扱うスキルは、どんな時代でも重宝されます。
年収アップのための3つのルート
- 今の職場で上げる：日々の業務改善を数値化し、「月○時間削減」「売上○%アップ」といった具体的な成果をまとめて、昇給交渉に臨みましょう。
- 社外で上げる：定期的に転職サイトで自分の市場価値をチェックし、面接で他社のオファーを比較・交渉することで、年収を上げられる可能性が高まります。
- 副業で上げる：自分のスキルを「単価×時間」で切り出し、副業として提供してみましょう。例えば、データ入力やマニュアル作成など、まずは小さな仕事から始めてみるのがおすすめです。
柱② 支出：固定費を削れば、毎月“自動で”貯まる
家計改善の王道は、**「固定費の見直し」**です。一度見直せば、何もしなくても毎月お金が浮きます。
- 住居費：手取り収入の25〜30%以内に抑えるのが理想です。賃貸なら更新時に家賃交渉を試みたり、より家賃の安いエリアへの引っ越しを検討したりするのも一つの手です。
- 通信費：大手キャリアから格安SIMに切り替えるだけで、年間数万円〜10万円以上節約できるケースも珍しくありません。格安SIM【LinksMate（リンクスメイト）】
- 保険料：高額療養費制度を前提に、「日額いくら必要か」から逆算して、本当に必要な保障だけをシンプルに掛け捨てで持つのが合理的です。
柱③ リスク管理：「病気・介護・雇用」に数字で備える
人口減少と高齢化が進む時代は、**「病気」「介護」「失業」**といったリスクへの備えが、より重要になります。
- 病気・ケガ：万が一、働けなくなった時のために、最低でも生活費6か月分の生活防衛資金を確保しておきましょう。
- 介護：親や自分の介護が必要になった時に慌てないよう、家族で在宅介護か施設介護かを話し合っておくこと。
- 雇用・スキル陳腐化：定期的に社外で自分の市場価値を測り、常に新しいスキルを学び続けることが、時代に取り残されないための最善策です。
柱④ 居住×通勤圏の再設計：「賃料・所得・移動時間」の最適解
都市部への人口集中が進む一方で、リモートワークが普及した今、私たちは「どこに住むか」をより自由に選べるようになりました。
- 勤務地から30〜60分圏内の駅をいくつかピックアップし、家賃、通勤時間、交通費を比較してみましょう。
- 通勤時間を自分の時給に換算して、「この時間の価値」を考慮に入れると、より現実的な判断ができます。
人口動態が変わる時代だからこそ、この4つの柱を意識した家計戦略が、あなたの将来を力強く支えてくれるはずです。
投資戦略：人口減でも伸びる“需要”はどこか？
「日本株は人口が減るからダメ」という単純な見方をしてはいけません。人口減少という逆風の中でも、確実に成長する「未来の需要」は存在します。
ここでは、私が注目している5つの投資テーマをご紹介します。
テーマ1：ヘルスケア＆介護テック
高齢化が進む日本では、医療や介護の需要は右肩上がりです。人手不足を解消するための介護ロボットや、オンライン診療、予防医療など、テクノロジーを活用したサービスは今後も伸びていくでしょう。
テーマ2：省人化・自動化・ロボティクス
人手不足は、企業が自動化やDX（デジタルトランスフォーメーション）に投資する大きな動機となります。産業用ロボットやAI、物流効率化の技術を持つ企業は、今後も成長が期待できます。
テーマ3：物流・ラストワンマイル
EC（電子商取引）の拡大と、トラックドライバーの労働時間規制（2024年問題）によって、物流の効率化は日本の喫緊の課題です。都市近郊の大型物流施設や、物流効率化を支援する企業は、今後も重要な役割を担います。
テーマ4：都市不動産＆空き家ビジネス
人口が集中する都市部の不動産需要は根強く、価値も維持されやすいでしょう。一方、地方の空き家問題は深刻化しており、空き家を再生して賃貸や民泊として活用するビジネスにも注目が集まっています。
テーマ5：外国人居住の増加が生む内需
在留外国人の増加は、日本の内需構造を変化させます。彼らが生活する上で必要な、住居、教育、多言語対応サービス、送金・決済システムなどを提供する企業は、新たな成長機会を掴める可能性があります。
これらのテーマに、いきなり個別株で投資するのはハードルが高いかもしれません。そこで、初心者におすすめなのが、コア（広い分散投資）とサテライト（テーマ投資）を組み合わせるポートフォリオです。
- コア（70〜85%）：全世界株式のインデックスファンドなど、幅広く分散された資産に積立投資
- サテライト（15〜30%）：ヘルスケアETFやロボティクスETFなど、成長が期待できるテーマに少額を振り分ける
こうすることで、リスクを抑えつつ、未来の成長を捉えることができます。
住宅・不動産：二極化時代の意思決定フレーム
人口減少と都市集中という二つのトレンドは、住宅・不動産市場の「常識」を塗り替えます。
「立地＞築年数＞広さ」という不動産の価値判断は、今後さらに強まるでしょう。
「買う／借りる」を決める3つのステップ
住宅を購入すべきか、借り続けるべきか、誰もが悩む問題です。この判断を、感情ではなく数字で下すためのフレームをご紹介します。
ステップ1：所有コストで比較する
単純に「家賃」と「住宅ローン返済額」を比較するのではなく、「家賃」と「所有コスト」を比較しましょう。
所有コスト = ローン返済額 + 管理費・修繕積立金 + 固定資産税 + 保険料 + 将来の修繕費用
意外と見落としがちなのが、固定資産税や修繕費の積み立てです。これらの費用も含めた「所有コスト」が、今の家賃よりも高いか低いかを正確に計算することが重要です。
ステップ2：ブレークイーブン（元が取れる年数）を出す
購入にかかる初期費用や売却費用を考慮すると、何年住めば購入のメリットが出るのかを計算できます。一般的には「5年以上住むなら購入、それ未満なら賃貸」が一つの目安となります。
ステップ3：金利感応度をテストする
変動金利のローンを組む場合、金利が上がると返済額がどう変化するかをシミュレーションしておきましょう。例えば、金利が0.5%上がっただけで、返済額が月数千円〜1万円以上増えることもあります。
これらのステップを踏むことで、「なんとなく」ではなく、あなたのライフプランに合わせた最適な住まいの選択ができるはずです。
仕事と学び直し：人が減る国で“替えが利かない人”になる
人口が減るということは、一人ひとりの働き手の価値が上がることでもあります。では、どうすればその価値を最大化し、給料とキャリアを伸ばせるのでしょうか。
「替えが利かない人」になるためのロードマップ
私が考える「替えが利かない人材」は、**「現場力×データ×言語（多文化対応）」**の3つのスキルを掛け合わせた人です。
- 現場力：長年の経験で培われた、その仕事ならではの勘やノウハウ。
- データ：ExcelやBIツールを使い、現場の情報を数値化・可視化する力。
- 言語：やさしい日本語や英語など、多様なバックグラウンドを持つ人々とコミュニケーションを取る力。
この3つを組み合わせるための、具体的な12か月間のリスキリング（学び直し）ロードマップを提案します。
- 0-3か月：現場の仕事を全て書き出し、ムダや滞留を見つける。Excelの関数やピボットテーブルを極める。
- 3-6か月：定型業務を自動化するマクロやRPAを試してみる。外国人スタッフ向けに、多言語のマニュアルを自作してみる。
- 6-9か月：業務改善の成果を数値化し、「コストを○万円削減」「クレーム率を○%低減」といった形でまとめ始める。
- 9-12か月：まとめた成果を職務経歴書やポートフォリオに落とし込む。転職面談を受けて、自分の市場価値を客観的に測ってみる。
このロードマップを実践することで、あなたは「言われたことしかできない人」から、「自ら課題を見つけて解決できる人」へと大きく成長できます。
起業・副業のチャンス：縮む市場で伸びる“ニッチ”を刈り取る
人口が減る市場でも、特定の「ニッチな困りごと」はむしろ増えています。
私が専門家として特に注目している、初期費用を抑えて始められる副業・起業のチャンスを7つご紹介します。
- 介護“周辺”BPO：介護事業所の事務作業や記録、シフト調整などを代行するサービス。
- 家事代行×高齢者：介護保険外の生活支援（掃除、買い物代行など）。
- 移動支援：通院や買い物に不便を感じる高齢者・障害者向けの同伴サービス。
- 相続・家財整理：実家の片付けや遺品整理、買取再販をワンストップで提供。
- 空き家の「軽再生」：放置された空き家を清掃・修繕し、賃貸や社宅として活用。
- 超小型M&A：後継者不在で悩む小規模事業を買い取り、事業承継。
- 外国人向け生活サポート：在留外国人の行政手続きや住居探しを多言語で支援。
これらのビジネスは、特別な設備や大きな資金を必要とせず、あなたの「現場の知恵」と「コミュニケーション能力」を活かすことができます。
まとめ：「小さな国家」として人口動態を味方につける
人口減少という不可逆なトレンドは、私たちの生活の「前提」を大きく変えます。
この変化にただ流されるか、それとも変化を味方につけて、自らの力で未来を切り開くか。その差は、**「前提が変わったら、行動とコスト構造をすぐに変えられるか」**にかかっています。
この記事で解説した、
- 家計の固定費を削る
- 仕事で替えの利かないスキルを身につける
- 金利やリスクを数字で把握する
- 住む場所や働く場所を柔軟に考える
- 制度を賢く利用する
といった一つひとつの行動は、まるで**「機動力のある小さな国家」**を運営するようなものです。
30・90・365日の実行計画
最後に、今日からできる具体的なアクションを、期間別にまとめておきます。
Day 0–30（守りを固める）
- 家計の固定費を見直し、通信費や保険料の削減に着手する。
- 生活防衛資金として、生活費6か月分を別の口座に移す。
- 仕事で**「小さな業務改善」**を一つ見つけ、その効果を数字で記録する。
Day 31–90（攻めの種をまく）
- 副業や昇給交渉の**「交渉材料」**を作成する。
- 投資口座を開設し、少額から**「コア分散投資」**を始める。
- 起業・副業のアイデアを具体化し、最初の3人の顧客を見つけるための行動を開始する。
Day 91–365（仕組み化して飛躍する）
- 年に一度、**資産の「再配分（リバランス）」**を行い、ポートフォリオのバランスを整える。
- 四半期に一度、仕事での**「成果スライド」**を更新し、自分の市場価値を測り続ける。
- 住まいや家族の状況に合わせて、**「制度メンテ」**の日を設け、利用できる制度がないか確認する。
この計画を、あなたの人生の「地図」として活用してください。
人口は減っても、できることは増えます。
データで現実を見て、小さく、早く行動する。この「生きるセンス」こそが、私たちがこの時代を力強く生き抜くための鍵です。
さあ、今日から「小さな国家」の経営者として、あなたの未来を設計し直しましょう！
