最近話題になっている「住宅リースバック」。自宅を売却してもそのまま住み続けられるという仕組みで、高齢者世帯を中心に利用が広がっています。
しかし、NHKや国民生活センターの報道によると、リースバックに関するトラブルが全国で相次いでおり、特に高齢者を狙った契約が問題になっています。
本記事では、リースバックの仕組み、メリット・デメリット、実際に起きているトラブル事例、そして契約時の注意点について、わかりやすく解説します。
リースバックとは?その基本的な仕組み
リースバックとは、次のような流れで進む不動産取引です:
- 自宅を不動産会社に売却し、現金を受け取る
- 売却後も、その家に賃貸契約で住み続ける
たとえば、年金だけでは生活が不安な高齢者が、住み慣れた自宅を売却して老後資金を得つつ、引っ越さずに今の家に住み続けられる──という形です。
代表的なメリット
メリット内容 | 詳細 |
---|---|
住み慣れた家に住み続けられる | 生活環境を変えずに資金調達ができる |
まとまった資金が得られる | 売却代金を老後資金や生活費に充てられる |
固定資産税・修繕費の負担がなくなる | 所有者でなくなるため、維持費の支払い義務がなくなる |
引っ越し不要 | 精神的・体力的な負担が軽減される |
リースバックに潜む重大なデメリット
一見メリットが多いように見えるリースバックですが、実際には以下のようなトラブルが多発しています。
主なデメリット・トラブル一覧
デメリット内容 | 詳細 |
---|---|
売却価格が安い | 市場価格の60~80%とされ、安く買い叩かれる可能性がある |
家賃が高い・値上げリスクあり | 相場より高めに設定される傾向。契約更新時に家賃が倍増したケースも |
賃貸期間に制限 | 2〜3年の「定期借家契約」が多く、契約満了で退去となることも |
修繕費負担の曖昧さ | 借主が修繕費を負担する特約がある場合もあり注意が必要 |
買い戻しが困難 | 買い戻し価格が高額に設定されている、あるいは契約上できない場合もある |
強引な勧誘・説明不足 | 高齢者に長時間勧誘して契約させる例が報告されている |
家族・相続人とのトラブル | 事前相談がないまま契約すると、家族間の争いになる可能性も |
実際のトラブル事例 NHK報道より
NHKの報道によると、ある高齢女性は「住み続けられる」と聞いて契約したにもかかわらず、突然以下の3つの選択肢を迫られたそうです:
- 家賃を2倍以上(14万5000円)に値上げ
- 現行家賃維持だが半年後に退去
- 自宅を買い戻す(価格は売却時より大幅に高額)
このような一方的な通知に、「心臓が止まるかと思った」と女性は語っています。
この例に限らず、リースバックの契約後に「話が違う」と感じる人は非常に多く、消費生活センターにも多数の相談が寄せられています。
リースバックとリバースモーゲージの違い
似たような仕組みに「リバースモーゲージ」があります。違いは以下の通りです:
- リースバック:不動産会社に家を「売却」→そのまま「賃貸契約」で住み続ける
- リバースモーゲージ:自宅を担保に「融資を受ける」→死亡後に家を売却して返済
どちらも高齢者向けの資金調達手段ですが、契約内容が大きく異なるため、混同しないように注意が必要です。
契約時に必ず確認しておくべきポイント
- 契約書を隅々まで確認:口約束は無効。賃貸期間、家賃の更新条件、買い戻しの有無など全て書面で確認
- 複数業者から見積もりを取る:1社だけで決めない。買取価格と家賃の妥当性を比較
- 家族・専門家と必ず相談:高齢者だけで判断せず、子どもや信頼できる第三者に相談
- 消費者センターを活用:強引な勧誘や不明点がある場合は、各自治体の消費生活センターへ相談を
まとめ 財産を守るために、今こそ知識を
住宅リースバックは、適切に使えば有効な資金調達手段にもなります。
しかし、契約内容の不明確さやトラブルの多さから、安易に契約してしまうと住まいと財産を一度に失うリスクもあります。
高齢のご家族がリースバックを検討している場合は、必ず家族で話し合い、慎重に進めましょう。
「住み慣れた家を守る」「老後資金を確保する」という目的のもと、十分な知識と注意でトラブルを未然に防いでください。